オウンドメディアを運営していて、「検索流入はあるのにリピーターが増えない」「記事は読まれているはずなのに事業成果につながらない」と感じたことはありませんか。

2025年現在、検索体験の変化や生成AIの普及により、オウンドメディアを取り巻く環境は大きく変わりました。これまで有効だったSEO中心の集客モデルだけでは、安定した成長を続けることが難しくなっています。

こうした中で注目されているのが、ユーザーとの関係性を深める「ファン化」という考え方です。単なる再訪ではなく、共感や信頼を軸にした継続的なつながりを築くことが、メディア価値そのものを高めます。

本記事では、オウンドメディアを「集客装置」から「ファンベース」へ進化させるために必要な視点と戦略を体系的に整理します。なぜ今ファン化が重要なのか、どのような施策が有効なのかを理解することで、今後のメディア運営の判断軸が明確になるはずです。

これからのオウンドメディア運営に不安や課題を感じている方にとって、次の一手を考えるヒントとなる内容をお届けします。

2025年のオウンドメディアを取り巻く環境変化とは

2025年のオウンドメディアを取り巻く環境は、過去10年で築かれてきた常識が通用しなくなるほど大きく変化しています。最大の転換点は、Googleが検索生成体験を本格展開したことによる検索行動の構造変化です。検索結果画面上でAIが直接回答を提示する仕組みが一般化し、ユーザーがWebサイトをクリックせずに目的を達成する「ゼロクリックサーチ」が急増しています。

この変化は特に、用語解説や一般的なハウツー記事を中心とした辞書型コンテンツに大きな影響を与えています。Googleの公式見解や複数の業界レポートによれば、検索流入に依存したモデルは今後も不安定化が進むとされています。**検索上位を獲得しても、流入そのものが発生しないケースが増えている**ことは、オウンドメディア運営において看過できない現実です。

同時に、サードパーティCookieの完全廃止とデータプライバシー規制の強化により、これまで当たり前だった外部データを活用したターゲティングや効果測定が困難になりました。これにより、広告とSEOを組み合わせて短期的な成果を最大化する手法は限界を迎え、自社で取得・管理するファーストパーティデータの重要性が急速に高まっています。

観点2020年代前半2025年以降
検索行動クリック前提ゼロクリックが常態化
主要指標PV・UU指名検索・エンゲージメント
データ活用外部Cookie依存自社データ中心

さらに見逃せないのが、生成AIの普及によるコンテンツ供給量の爆発的増加です。誰でも一定水準の記事を短時間で作成できるようになった結果、情報そのものの希少性は大きく低下しました。こうした環境下では、「正しい情報を網羅的に掲載している」だけでは、ユーザーが特定のメディアを選ぶ理由になりません。

博報堂のコンテンツファン消費行動調査2025によると、生活者一人当たりのコンテンツ支出額は過去最高水準に達する一方、その多くは特定のブランドやメディアに強い愛着を持つファン層によって支えられています。**幅広い新規流入よりも、限られたファンとの関係深化が経済合理性を持つ時代に移行している**ことが、データからも読み取れます。

このような背景から、2025年のオウンドメディアは「集客装置」ではなく「関係性の拠点」としての役割を求められるようになりました。ユーザーがAIの要約では満足できない独自の視点や体験、価値観に触れたいと感じたとき、指名検索という形で思い出される存在であるかどうかが、メディアの生存を左右します。

ゼロクリックサーチ、データ規制、生成AIという三重の変化により、オウンドメディアの価値基準は「流入量」から「想起される理由」へと移行しています。

2025年は、テクノロジーの進化がオウンドメディアの存在意義そのものを問い直す年です。この環境変化を正しく理解できるかどうかが、今後の戦略設計の質を大きく左右すると言えるでしょう。

ゼロクリックサーチがもたらす集客モデルの限界

ゼロクリックサーチがもたらす集客モデルの限界 のイメージ

ゼロクリックサーチの拡大は、オウンドメディアの集客モデルそのものに限界を突きつけています。検索結果画面上で答えが完結する環境では、従来の「検索順位を上げれば流入が増える」という前提が成立しません。特に用語解説や一般的なハウツー記事は、SGEによる要約で代替されやすく、クリックされないまま消費されるリスクが高まっています。

実際、Googleの検索体験に関する公式発表や、海外のSEO専門家の分析によれば、情報探索型クエリほどクリック率が低下する傾向が指摘されています。これは、検索流入を起点にCVを積み上げる「刈り取り型モデル」が、構造的に不安定になっていることを意味します。

問題は流入数の減少だけではありません。ゼロクリック環境では、ユーザーが誰の情報を読んだのかを認識しないまま課題を解決してしまうため、ブランド記憶や信頼の蓄積が起こりにくくなります。結果として、次の接点が生まれず、LTVの最大化が難しくなります。

観点従来モデルゼロクリック環境下
主戦場検索結果の順位検索結果画面内
ユーザー行動クリックして比較要約を読んで離脱
ブランド接触記事単位で発生ほぼ発生しない

この変化により、PVやUUをKPIに据えた運営は、投下コストに対して成果が見合わなくなりつつあります。博報堂のコンテンツ消費行動調査でも、広く薄い接触よりも、限られたファン層の深い関与が市場を支えている構造が示されています。

  • 検索流入は外部プラットフォーム依存で不安定
  • ゼロクリックではブランド想起が起きにくい
  • 短期CVは取れても関係性が残らない

つまり、ゼロクリックサーチ時代においては、検索流入を集客の中心に据えるほどリスクが高まります。ユーザーが「探しに来る」前提のモデル自体が限界に近づいている以上、集客を検索に依存しない視点への転換が不可欠です。

検索に勝つことより、検索を介さずに選ばれる状態をつくれるかが、これからの集客モデルの分岐点になります。

オウンドメディアにおける「ファン化」の定義と重要性

オウンドメディアにおけるファン化とは、単に再訪率を高めることではありません。読者がそのメディアやブランドに対して情緒的な愛着と信頼を持ち、能動的に情報を求め、さらには他者に推奨する状態へと関係性が進化することを指します。

これはPVや一時的なコンバージョンでは測れない、中長期的な価値の蓄積プロセスです。Googleの検索生成体験が進展する中、一般的な情報提供だけでは検索結果画面内で完結してしまい、クリックされないケースが増えています。

この環境下でユーザーがわざわざ訪れる理由は、「このメディアだから読みたい」という指名動機に他なりません。指名検索の増加は、ファン化が進んでいる明確な兆候です。

観点一般的な読者ファン化した読者
訪問動機課題解決・調べもの共感・信頼・習慣
検索行動非指名検索指名検索
行動閲覧のみシェア・コメント・推奨

重要なのは、ファン化が外部環境の変化に強いメディア基盤をつくる点です。博報堂の調査によれば、コンテンツ市場では支出総額の伸びが鈍化する一方、熱心なファン層による支出は増加傾向にあり、市場を牽引しています。

これは、薄く広い集客よりも、深い関係性を持つ少数のファンが事業価値を支える構造へと移行していることを示しています。オウンドメディアも同様で、ファンは広告費をかけずに戻ってきてくれる存在です。

さらにファン化は、LTVの向上や口コミによる新規獲得といった波及効果を生みます。企業が発信するメッセージよりも、ユーザー自身の言葉の方が信頼されやすいことは、マーケティング分野の研究でも繰り返し示されています。

ファン化は集客施策ではなく、信頼と関係性を資産として積み上げる経営視点の取り組みです。

また、ファン化が進んだメディアでは、読者の行動が変わります。記事を読むだけでなく、意見を寄せ、イベントに参加し、ブランドの一部として振る舞うようになります。

この状態に至って初めて、オウンドメディアは単なる情報発信チャネルではなく、事業成長を支える中核的な存在になります。だからこそ、ファン化は今の時代において重要性を増しているのです。

指名検索が増えるメディアと増えないメディアの違い

指名検索が増えるメディアと増えないメディアの違い のイメージ

指名検索が増えるメディアと増えないメディアの差は、コンテンツの良し悪し以前に、ユーザーの検索行動をどう設計できているかにあります。ゼロクリックサーチが常態化した現在、ユーザーは「調べたいテーマ」ではなく「信頼できる名前」を起点に検索する傾向を強めています。

Googleの検索生成体験が普及するにつれ、一般的なハウツーや用語解説は検索結果画面内で完結しやすくなりました。その結果、クリックされるのはAIの要約では代替できない「このメディアだから読みたい理由」を持つサイトに限られます。指名検索が増えるかどうかは、その理由をユーザーの記憶に残せているかの指標とも言えます。

観点指名検索が増えないメディア指名検索が増えるメディア
検索の起点キーワード起点ブランド・人起点
コンテンツ価値機能的価値が中心情緒的価値と独自視点
記憶への残り方内容のみ消費され忘れられる名前ごと想起される

指名検索が増えないメディアの多くは、検索ニーズへの適合を最優先し、「正解を過不足なく書く」ことに注力しています。これは機能的信頼を得るうえでは有効ですが、情報が均質化した今、その記事を読んだ後にメディア名まで覚えてもらえるケースは多くありません。

一方、指名検索が増えるメディアは、ユーザーの頭の中に「このテーマなら、あのメディア」「この考え方は、あの人」という結びつきを作っています。博報堂のコンテンツファン消費行動調査でも、ファン化が進んだブランドほど能動的な情報探索行動が強いことが示されており、指名検索はその最も分かりやすい表出です。

  • 誰が語っているかが明確である
  • 価値観やスタンスが一貫している
  • 他では得られない一次的な示唆がある

これらを満たすメディアは、記事単体ではなく「メディアそのもの」を検索対象に変えています。たとえば専門家監修や一次データの解釈に加え、運営者の経験や判断プロセスを開示することで、読者は情報と同時に思考様式を学ぶようになります。

結果として、「また同じ視点で読みたい」「次は何を言うのか知りたい」という内発的動機が生まれ、検索窓にブランド名やメディア名が入力されます。指名検索はSEO施策の延長ではなく、信頼と共感の蓄積によってのみ増える行動です。

PVが伸びているのに指名検索が増えない場合、それはコンテンツが消費されて終わっているサインです。逆に、流入数が急増していなくても指名検索が着実に伸びているメディアは、ゼロクリック時代においても安定した成長基盤を築いていると言えます。

ファンを生み出す心理メカニズムと内発的動機づけ

オウンドメディアがファンを生み出すためには、単なる情報提供を超え、読者の行動を内側から駆動する心理メカニズムを理解する必要があります。鍵となるのが「内発的動機づけ」です。これは報酬や強制ではなく、興味や共感、成長実感といった感情から自発的に行動したいと思う状態を指します。

心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した自己決定理論によれば、人は「自律性」「有能感」「関係性」という3つの欲求が満たされると、内発的に動機づけられるとされています。オウンドメディアに置き換えると、読者が自分の意思で読み進め、理解が深まり、運営者や他の読者とのつながりを感じられる設計が不可欠です。

多くのメディアが陥りがちなのは、割引情報やキャンペーン告知といった外発的動機への依存です。これらは短期的な流入には効果的ですが、報酬が消えた瞬間に関係も終わるという構造的弱点を抱えています。ゼロクリックサーチが進む現在、このモデルは持続しません。

動機の種類主な刺激読者との関係性
外発的動機割引・特典・ランキング条件付き・短期的
内発的動機学習欲・共感・物語自発的・長期的

内発的動機を刺激する代表的な要素が「物語性」です。スタンフォード大学の研究でも、人は事実の羅列よりもストーリーを通じて情報を受け取った方が、記憶定着率と感情的共感が高まることが示されています。オウンドメディアにおいて、運営者の試行錯誤や意思決定の背景を語ることは、読者の学習欲と共感を同時に満たします。

さらに重要なのが「自己効力感」の提供です。記事を読み終えたときに、読者が「少し賢くなった」「自分にもできそうだ」と感じられるかどうかが、再訪の分かれ目になります。ハウツー記事でも、完璧な答えを与えるのではなく、思考プロセスや判断基準を丁寧に示すことで、有能感を高めることができます。

  • 選択肢や考え方を提示し、読者に判断を委ねる
  • 成功だけでなく失敗や学びを共有する
  • 読者の立場や感情を言語化して代弁する

もう一つ見逃せないのが「関係性」の欲求です。Googleが提唱するE-E-A-Tでも重視される経験や信頼性は、単なる専門性ではなく、誰が、どんな思いで語っているのかが伝わることで初めて機能します。運営者の顔や価値観が見えるコンテンツは、読者に心理的な近さを生み出します。

結果として、内発的動機に基づいて形成されたファンは、更新通知を待ち、指名検索で訪れ、他者に推奨します。これはアルゴリズムや流入経路に左右されにくい、極めて強固な資産です。ファン化とは、読者の心の中に「戻ってきたい理由」を育てる行為であり、その中核に内発的動機づけの設計があることを、オウンドメディア運営者は深く理解する必要があります。

E-E-A-Tを超えて信頼を積み上げるコンテンツ設計

2025年以降のオウンドメディアでは、E-E-A-Tを満たしているだけでは「信頼され続けるメディア」にはなれません。**情報として正しいことと、人として信じられることは別物**だからです。ゼロクリックサーチが進む今、ユーザーがわざわざ訪問し続ける理由は、検索結果では代替できない「信頼の蓄積」にあります。

この信頼は一朝一夕で生まれるものではなく、コンテンツ設計の段階から意図的に組み込む必要があります。Googleが重視するE-E-A-Tはあくまで最低条件であり、その先にあるのは「このメディアは裏切らない」「長く付き合える」という感覚的な評価です。スタンフォード大学の説得研究でも、情報の正確性だけでなく、発信者の一貫性や誠実さが信頼形成に大きく寄与すると示されています。

信頼を積み上げるための設計視点

  • 短期成果よりも一貫性を優先する
  • 都合の悪い情報も含めて語る
  • 誰が、なぜ書いているのかを明確にする

特に重要なのが、**判断の背景やプロセスを開示するコンテンツ設計**です。結論だけを提示する記事はAIにも要約されやすく、信頼は残りません。一方で、意思決定の迷いや検証過程、失敗からの学びまで含めて共有することで、読者は情報ではなく「姿勢」を評価します。これはE-E-A-TのExperienceを、より人間的な文脈へ拡張する行為と言えます。

実際、米国のPew Research Centerの調査では、メディアへの信頼要因として「透明性」と「説明責任」が専門性と同等以上に重視されています。つまり、専門家が書いているかどうか以上に、**説明しようとしているか、誠実であるか**が問われているのです。

設計要素E-E-A-T止まり信頼を積み上げる設計
情報の出し方結論と正解のみ提示背景・試行錯誤・判断理由まで共有
発信者肩書き・監修名義価値観や立場が伝わる人格
トーン中立・無難一貫した主張とスタンス

また、信頼はコンテンツ単体ではなく「更新のされ方」からも判断されます。古い情報を放置しない、過去記事の誤りを修正した履歴を明示する、といった運用は地味ですが強力です。医学系メディアや学術出版社が更新日や改訂履歴を重視するのは、まさにこのためです。

最終的に目指すべきは、「このメディアが言うなら確認しなくても大丈夫」と思われる状態です。**信頼とは評価指標ではなく、時間をかけて蓄積される資産**です。E-E-A-Tを超えるとは、検索エンジンではなく人間の記憶と感情に残る設計へ踏み出すことに他なりません。

ナラティブと専門性を融合させたコンテンツ戦略

ゼロクリックサーチが常態化した2025年において、ユーザーが特定のオウンドメディアを訪れる理由は明確です。**AIの要約では代替できない「物語性」と「超専門性」が同時に存在しているかどうか**が、その分岐点になります。どちらか一方だけでは不十分であり、この二つを戦略的に融合させることが、ファン化を加速させるコンテンツ戦略の核心です。

まずナラティブは、単なる読み物ではありません。ブランドや運営者が「なぜこのテーマを扱うのか」「どんな試行錯誤を経て今に至ったのか」という文脈を共有する行為です。パーソルテンプスタッフの「ハッケン・テンプ」が評価された背景には、成功談だけでなく、派遣という働き方に対する不安や葛藤を正面から描いた点があります。都合の良い情報だけを並べない姿勢が、読者との心理的距離を縮め、情緒的信頼を生み出しました。

一方で、ナラティブだけでは継続的な来訪理由にはなりません。ここで必要になるのが「超専門性」です。Googleが重視するE-E-A-Tの文脈でも示されている通り、経験と専門性に裏打ちされた情報は、検索体験が変わっても価値を失いません。宇宙ビジネス専門メディア「宙畑」は、政府機関や研究機関が公開する一次データを噛み砕いて解説することで、業界内外から高い評価を獲得しています。**読者は“調べる手間”ではなく、“理解できた体験”に対してファンになる**のです。

重要なのは、物語が専門性を引き立て、専門性が物語に説得力を与える構造を設計することです。

この融合を実践する際の視点を整理すると、次の三点に集約されます。

  • なぜこのテーマを扱うのかという個人的・組織的背景を開示しているか
  • 公開情報ではなく、一次情報や実務知見に基づいているか
  • 読者が他人に語りたくなる独自の解釈や視点があるか

博報堂のコンテンツファン消費行動調査2025でも、熱量の高いファン層が市場を牽引していることが示されています。これは、表面的なノウハウ記事ではなく、「このメディアだから読みたい」という指名検索が増えている状態を意味します。ナラティブと専門性を掛け合わせた記事は、検索流入を超えて、読者の記憶と感情に残り続けます。

オウンドメディアにおけるコンテンツ戦略とは、情報を整理して伝える作業ではありません。**専門家としての深さと、人としての温度を同時に伝える設計思想そのもの**です。この思想が一貫しているメディアだけが、AI時代においても「わざわざ訪れたい場所」として選ばれ続けます。

コミュニティがファン化を加速させる理由

コミュニティがファン化を加速させる最大の理由は、ユーザーの立場を「読む人」から「参加する人」へと根本的に変える力を持っている点にあります。情報過多でゼロクリックサーチが常態化した現在、単に有益な記事を提供するだけでは、継続的な関係は生まれにくくなっています。コミュニティは、オウンドメディアに「居場所」と「関係性」を与えることで、AIには代替できない価値を生み出します。

社会心理学では、人は集団に所属することで自己価値を確認し、行動を継続しやすくなることが知られています。マズローの欲求階層説における「所属と愛の欲求」はその代表例であり、コミュニティはまさにこの欲求を満たす装置です。ハーバード・ビジネス・レビューによれば、ブランドコミュニティに参加している顧客は、非参加者に比べて長期的なロイヤルティと推奨意向が有意に高い傾向が示されています。

視点コミュニティがある場合コミュニティがない場合
ユーザーの関与コメント・投稿・交流を通じて能動的記事閲覧のみの受動的
感情的価値共感・連帯感・承認を得やすい機能的満足に留まりやすい
継続利用人との関係性が理由で再訪必要な情報がある時のみ訪問

特に重要なのは、ファン同士の横のつながりが生まれる点です。運営者とユーザーの一対一の関係に留まらず、ユーザー同士が体験や意見を共有することで、メディア全体が一つの文化圏として機能し始めます。博報堂のコンテンツファン消費行動調査でも、コミュニティ参加者は「応援している感覚」を持ちやすく、支出や情報拡散に積極的になる傾向が示されています。

また、コミュニティは信頼を短期間で深化させます。コメントへの丁寧な返信や、ユーザー投稿の紹介といった小さな対話の積み重ねが、「このメディアは自分たちを大切にしている」という情緒的信頼を育てます。これはE-E-A-Tの中でも特に信頼性と経験の評価を底上げする要素であり、結果として指名検索や再訪率の向上につながります。

  • 参加する理由が生まれ、閲覧が習慣化しやすい
  • 他者の存在が学びや共感を増幅させる
  • 関係性そのものがメディア価値になる

コミュニティが育つと、ユーザーはメディアを「情報源」ではなく「自分の居場所」として認識し始めます。この認識の転換こそが、ファン化を一段階引き上げ、長期的なエンゲージメントと自発的な推奨行動を生み出す原動力になります。

LINE・会員基盤を活用したファンとの関係維持

LINEや会員基盤は、ゼロクリックサーチ時代においてファンとの関係を継続的に育てるための中核的な接点です。検索やSNSのアルゴリズムに左右されず、自社から能動的に届けられるチャネルを持つこと自体が、オウンドメディアの資産価値を大きく高めます。

特にLINE公式アカウントは、日本国内での利用率の高さから、メルマガ以上に「日常に入り込める」コミュニケーション手段です。総務省の通信利用動向調査でも、LINEは全年代で最も利用率の高いSNSとして位置づけられており、情報到達率の観点で非常に優位です。

項目LINE活用一般的なSNS
情報到達プッシュ配信で高いアルゴリズム依存
データ連携会員IDと紐づけ可能限定的
関係性1to1に近い不特定多数

重要なのは、LINEを単なる更新通知やキャンペーン告知の場にしないことです。オルビスの事例では、顧客IDとLINEを連携させ、購買履歴や興味関心に応じたセグメント配信を行うことで、顧客獲得コストを約2割削減しています。これは「誰に、何を、いつ届けるか」を精緻に設計した結果です。

オウンドメディアでも同様に、会員登録によって得られる閲覧履歴や診断結果を活用し、「この記事を読んだ人には次にこれを届ける」といったストーリー設計が有効です。HubSpotなどのCRMを用いたスコアリングでは、行動データの蓄積が進むほど、ファン度合いを可視化できると報告されています。

LINE・会員基盤は「集客装置」ではなく、関係を育てるためのインフラです

また、ステップ配信の考え方も欠かせません。登録直後にいきなり商品やサービスを訴求するのではなく、まずはメディアの思想や代表的なコンテンツに触れてもらう導線を設けます。行動科学の分野でも、信頼形成には段階的接触が有効だとされており、これは内発的動機づけを高める上でも理にかなっています。

  • 登録初期:世界観・価値観が伝わる記事
  • 中期:課題解決に役立つ深掘りコンテンツ
  • 成熟期:限定情報や参加型企画への招待

さらに会員基盤を持つことで、サードパーティCookieに依存しないファーストパーティデータが蓄積されます。これはプライバシー規制が強化される中で、Googleも重要性を強調している領域です。自社で取得したデータをもとに、読者一人ひとりにとって意味のある体験を設計できるかどうかが、ファン化の分水嶺になります。

LINEと会員基盤を連動させた運用は、短期的なPV増加には直結しません。しかし、指名検索や再訪、推奨行動へとつながる関係性を着実に積み上げます。検索流入が不安定な時代だからこそ、こうした「つながり続けられる仕組み」を持つメディアが、長期的に選ばれ続けます。

PV依存から脱却するためのKPIと組織体制の考え方

PVを中心とした評価体系は、ゼロクリックサーチが常態化した2025年以降、オウンドメディアの成長を正しく測れなくなっています。検索結果上で情報が完結する環境では、PVが伸び悩むこと自体は必ずしも失敗を意味しません。むしろ重要なのは、**どれだけ深く読まれ、どれだけ記憶され、次の行動につながったか**という質的な指標です。

Googleの検索品質評価ガイドラインやHubSpotの調査によれば、長期的に成果を出しているメディアほど、トラフィック指標よりもエンゲージメントとロイヤルティ指標を重視しています。これはSEOとAIOの両面から見ても合理的で、AIに要約されにくい「関係性の深さ」こそが、メディアの競争優位になるためです。

観点PV依存型脱PV型KPI
成果の定義多く読まれたか何度・どれだけ深く関与されたか
主な指標PV、UU指名検索数、再訪率、読了率
意思決定短期最適中長期最適

特に注目すべきKPIが指名検索数です。これはユーザーがブランド名やメディア名を自発的に検索する行為であり、博報堂の調査でも「ブランド想起の強さ」と高い相関が示されています。**指名検索が増えている状態は、メディアが情報源ではなく“選ばれる存在”になっている証拠**です。

加えて、滞在時間や読了率、コメント数、UGC発生数といった行動指標を組み合わせることで、コンテンツがどの程度ユーザーの内発的動機を刺激しているかを把握できます。NPSのような定性指標を定期的に取得することも、ファン化の進捗を測る上で有効です。

  • 量ではなく関係性の深さを測るKPIに置き換える
  • 短期変動よりもトレンドを見る運用ルールを設ける

こうしたKPIを機能させるためには、組織体制の見直しが不可欠です。PV至上主義の組織では、編集者はどうしても検索ボリューム重視の企画に引っ張られます。そこで重要になるのが、編集、コミュニティ、データ分析を分業しつつ連携させる体制です。

海外の成功事例でも一般的になりつつあるのがコミュニティマネージャーの設置です。コンテンツ制作とは別に、読者との対話、コメント返信、イベント運営、SNSでの関係構築を専門に担う役割を置くことで、KPIが「数字」から「人の行動」へと転換されます。

さらに、データアナリストが定量データを可視化し、編集チームと共有することで、感覚論ではない改善サイクルが回り始めます。**PVから脱却するとは、指標を変えることではなく、組織の意思決定の軸を変えること**です。その転換ができたメディアだけが、AI時代に持続的な価値を提供し続けられます。

参考文献