オウンドメディアを運用していて、「アクセス数は増えているのに、なぜか問い合わせや商談につながらない」と感じたことはありませんか。SEOに取り組み、記事本数も増やし、一定のPVは確保できている。それでも事業成果に結びつかないという悩みは、多くのメディア責任者・運用者が直面している共通課題です。
その背景には、単なるコンテンツ量や導線設計の問題ではなく、オウンドメディア全体に潜む“ナーチャリング不全”という構造的な問題があります。特に近年は、生成AIの普及によるコンテンツのコモディティ化、Z世代の価値観変化、クッキーレス時代への移行など、外部環境の変化がこの問題をさらに複雑にしています。
本記事では、なぜオウンドメディアで顧客育成がうまく機能しなくなっているのかを、最新の市場データや実際の企業事例、ユーザー行動の変化をもとに整理します。そして、PV至上主義から脱却し、信頼と意思決定を後押しするメディアへと転換するための考え方を明らかにします。自社メディアの次の一手を考えるヒントとして、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
PV至上主義が限界を迎えたオウンドメディアの現在地
オウンドメディア運営において、PVを最大化することが最優先だった時代は、明確に転換点を迎えています。SEOによって検索上位を獲得し、一定の流入を確保できているにもかかわらず、**事業成果につながらないという違和感**を抱える担当者は少なくありません。
背景には、PVやセッション数といった量的指標が、収益や受注といった最終成果との相関を失いつつある現実があります。2024年から2025年にかけての国内調査でも、多くの企業が「流入はあるが、リードが育たない」という課題に直面していることが示されています。単に人を集めるだけでは、もはや競争優位は築けません。
PV至上主義の限界は、「集めた後」を設計してこなかった点にあります。
実際、B2B領域ではユーザーの行動特性がECとは大きく異なります。WACULの分析によれば、B2Bサービスサイトの直行CV率は0.7%と極めて低く、訪問者は即決せず、時間をかけて情報を精査する傾向が明らかになっています。つまり、PVが増えても、その大半は検討途中の状態で離脱している可能性が高いのです。
| 指標 | ECサイト | B2Bサービスサイト |
|---|---|---|
| 直行CV率 | 21.7% | 0.7% |
| 滞在傾向 | 短時間 | 長時間・慎重 |
にもかかわらず、多くのオウンドメディアでは、検索ボリュームの大きいキーワードを狙った記事が量産され、ユーザーの検討プロセスを支える情報が不足しています。その結果、PVは伸びても、ブランド理解や信頼形成に寄与しない「空洞化したトラフィック」が蓄積されていきます。
さらに、生成AIの普及によって平均点の記事は誰でも作れるようになりました。HubSpot Japanの調査では、マーケターの8割以上が生成AIを活用している一方で、**情報の正確性や信頼性への懸念**も同時に高まっています。似たような記事が並ぶ中で、PVだけを追う戦略は、ユーザーの記憶にも意思決定にも残りません。
今、オウンドメディアは「どれだけ読まれたか」ではなく、「読者の意思決定にどれだけ寄与したか」を問われるフェーズにあります。PV至上主義が限界を迎えた現在地とは、成果に近づかない数字を追い続けることへの、業界全体の無言の違和感が顕在化した地点だと言えるでしょう。
なぜ集客できてもナーチャリングが機能しないのか

集客自体は成功しているにもかかわらず、ナーチャリングが機能しない最大の理由は、流入したユーザーの「検討プロセス」が設計されていないことにあります。多くのオウンドメディアではSEOを前提とした記事制作によりPVは伸びていますが、その先の行動変容まで視野に入れたコンテンツ設計が欠けています。
WACULの調査によれば、B2Bサービスサイトにおける直行CV率は0.7%と極めて低く、ユーザーの大半は即断即決ではなく、慎重な情報精査を行っています。それにもかかわらず、検索流入向けの定義解説や概要記事だけを量産してしまうと、ユーザーは「参考になった」で離脱し、次の接点が生まれません。
| 観点 | 集客コンテンツ中心 | ナーチャリング視点 |
|---|---|---|
| 目的 | 検索流入の最大化 | 意思決定の前進 |
| 主な内容 | 用語解説・一般論 | 比較・検討・判断材料 |
| ユーザー行動 | 単発閲覧で終了 | 回遊・再訪が発生 |
さらに深刻なのが、ユーザー心理の段階を無視した急激なCTA設計です。課題を調べ始めたばかりのユーザーに、いきなり資料請求や問い合わせを促しても、心理的ハードルが高すぎます。この断絶は「ミッシング・ミドル」と呼ばれ、検討フェーズ向けコンテンツの欠如がナーチャリング不全を引き起こします。
- 自社に当てはまるか判断できない
- 他社との違いがわからない
- 社内で説明する材料が不足している
これらの不安を解消しないままでは、ユーザーは前に進めません。SmartHRのように、受注データから逆算して「どのコンテンツが意思決定に寄与したか」を分析している企業は例外的で、多くの現場ではPVや検索順位といった表層指標に留まっています。
加えて、生成AIの普及によるコンテンツの均質化も影響しています。HubSpot Japanの調査が示す通り、マーケター自身が「AI生成コンテンツの信頼性」に懸念を抱く時代です。独自の知見や具体的な判断材料がない記事は、読まれても信頼されず、育成にはつながりません。
集客できているのにナーチャリングが機能しない状態は、量の問題ではなく構造の問題です。ユーザーの検討行動を分解し、その一歩先を自然に示せていないことこそが、最大のボトルネックになっています。
ミッシング・ミドルが生まれるコンテンツ構造の問題
ミッシング・ミドルが生まれる最大の要因は、コンテンツ単体の質ではなく、**コンテンツ構造そのものがユーザーの意思決定プロセスに対応していない点**にあります。
多くのオウンドメディアでは、検索流入を目的とした集客記事と、問い合わせや資料請求を促すCV導線が断絶しており、その間をつなぐ設計思想が欠けています。
結果として、情報収集を終え「次に何を判断すればよいか」を探しているユーザーが、行き場を失って離脱してしまいます。
| コンテンツ構造 | 主な目的 | ユーザー心理への影響 |
|---|---|---|
| 集客特化型 | 検索流入の最大化 | 知識は得られるが次の行動が見えない |
| CV直結型 | 問い合わせ・資料請求 | 検討が浅く心理的ハードルが高い |
| 意思決定支援型 | 比較・検討・社内説明 | 判断材料が揃い安心感が生まれる |
WACULの調査によれば、B2Bサービスサイトの直行CV率は0.7%と極めて低く、**ほとんどのユーザーは即決せず、慎重な検討プロセスを前提に行動している**ことが分かっています。
にもかかわらず、多くのメディアは「まずは集客、次はCV」という直線的な構造を前提にしており、その間に必要な情報設計が存在しません。
この構造では、ユーザーが自社にとっての重要性や導入判断の材料を自力で補完する必要があり、結果として比較サイトや競合コンテンツへ流出します。
さらに問題を深刻化させているのが、生成AIの普及によるコンテンツの均質化です。
HubSpot Japanの調査でも示されている通り、マーケターの8割以上が生成AIを活用する一方で、情報の差別化が困難になり、ユーザーは「平均的な解説記事」に価値を感じにくくなっています。
その結果、TOFUコンテンツは量産される一方で、**自社独自の判断軸や意思決定の考え方を示すミドルファネル向けコンテンツが意図せず削ぎ落とされている**のです。
- 比較や選定の考え方が示されていない
- 導入判断に伴う不安や反論への回答がない
- 社内説明に使える根拠やストーリーがない
こうした欠落は、単に記事本数を増やしても解消されません。
重要なのは、ユーザーがどの段階で、どのような判断を迫られているかを前提に、**コンテンツ同士が論理的に接続された構造**を持っているかどうかです。
ミッシング・ミドルは、ユーザー理解の不足がそのままコンテンツ構造に反映された結果であり、ナーチャリング不全の中核的な原因となっています。
顧客インサイトの解像度不足が招く意思決定の停滞

顧客インサイトの解像度が低い状態では、オウンドメディアにおけるあらゆる意思決定が鈍化します。どのテーマを書くべきか、どのCTAを置くべきか、どの記事を改善すべきか。その判断軸が曖昧になり、結果として「なんとなく前年踏襲」の運用に陥りがちです。
特に問題なのは、顧客理解をペルソナやカスタマージャーニーといった形式的なアウトプットで止めてしまうことです。**属性や役職が整理されていても、「なぜ今その情報を探しているのか」「社内でどんな反対に遭っているのか」といった行動の背景まで掘り下げられていないケースが非常に多い**のが実情です。
その結果、編集会議では次のような意思決定の停滞が起こります。PVは取れているが商談につながらない理由が説明できない、改善案が感覚論になり合意形成に時間がかかる、営業部門から「使えないコンテンツ」と評価される、といった状況です。
| インサイトの状態 | メディア運用で起きる現象 | 意思決定への影響 |
|---|---|---|
| 表層的(属性中心) | PVや検索順位のみを評価 | 改善優先度が決められない |
| 中途半端(課題仮説のみ) | 施策が散発的になる | 施策継続・撤退の判断が遅れる |
| 高解像度(行動背景・感情) | 記事の役割が明確 | 投資判断が迅速になる |
SmartHRが実践しているように、受注データから逆算して「どのコンテンツが、どのフェーズの意思決定に寄与したのか」を可視化できると、議論は一気に前に進みます。これは単なるKPI管理ではなく、顧客インサイトを定量データで裏付ける行為です。
一方、多くの企業では「なぜその記事が読まれたのか」「読後にどんな不安が解消されたのか」といった問いが置き去りにされています。HubSpot Japanの調査でも、生成AI活用が進む一方で、**顧客理解や戦略設計に使えていない企業が少なくない**ことが示唆されています。
インサイト解像度が低いと、意思決定は必ず属人化します。経験豊富な担当者の勘に依存し、異動や退職とともに判断基準が失われます。逆に、顧客の行動理由や感情の変化が言語化されていれば、「このコンテンツは検討初期の不安解消が目的」「このCTAは社内説得フェーズ向け」と共通認識を持てます。
顧客インサイトの解像度向上は、コンテンツ改善のためではなく、意思決定コストを下げるための投資です。
意思決定が速いオウンドメディアほど、顧客を深く理解しています。誰に、どんな心理変化を起こしたいのかが明確だからこそ、迷いなく施策を選び、改善を回せるのです。顧客インサイトの解像度不足は、ナーチャリング以前に、組織の判断力そのものを奪っていると言えます。
生成AI時代に加速するコンテンツのコモディティ化
生成AIの急速な普及により、コンテンツ制作の前提条件は大きく変わりました。HubSpot Japanの調査によれば、マーケターの81.6%が生成AIを業務で活用しており、その多くが「生産性向上」を実感しています。これは裏を返せば、誰もが一定水準の記事を短時間で量産できる時代に突入したことを意味します。
結果としてWeb上には、定義解説や一般論、フレームワークをなぞった記事が溢れ、情報の希少性は急速に失われました。検索結果やSNSで目にする内容は似通い、読者は「どの記事を読んでも同じ」という感覚を抱きやすくなっています。こうした状況こそが、生成AI時代におけるコンテンツのコモディティ化です。
この変化は単なるSEOの問題にとどまりません。AI検索や要約機能が進化する中で、平均点の情報はクリックされる前に消費されるようになり、オウンドメディアが果たしてきた「詳しく説明する役割」自体が揺らいでいます。用語解説や網羅的まとめは、もはや参入障壁にならないのです。
| 観点 | 従来 | 生成AI普及後 |
|---|---|---|
| 制作コスト | 高い | 極めて低い |
| 情報の希少性 | 一定程度ある | ほぼ存在しない |
| 差別化要因 | 網羅性・分量 | 経験・視点・信頼 |
特に深刻なのは、売り手側もこの均質化に気づき始めている点です。同じHubSpotの調査では、「AIが作成した情報の正確性が判断できない」「各社の提案が似通う」といった不安が示されています。つまり、量産できること自体が価値を生まなくなっているのです。
この環境下で読者が求めるのは、検索すれば出てくる答えではありません。自社ならではの失敗談、現場で得た一次情報、意思決定の裏側にある葛藤や判断基準など、生成AIが容易に再現できない文脈です。Googleが提唱するE-E-A-Tの中でも、とりわけ「Experience(経験)」が重視される理由はここにあります。
コンテンツのコモディティ化が進むほど、オウンドメディアは単なる情報置き場ではなく、どの立場で、誰が、なぜ語っているのかを明確に示す場へと変わります。平均点の記事を増やすほど、存在感は薄れる。この逆説を理解できるかどうかが、生成AI時代のコンテンツ戦略の分水嶺になります。
E-E-A-Tと信頼性がナーチャリング成果を左右する理由
ナーチャリングの成果を左右する最大の分岐点は、情報の量や巧みな導線ではなく、その情報をどこまで信頼してもらえるかにあります。特に2025年の環境下では、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)が担保されていないコンテンツは、読まれても「次の行動」につながりません。
HubSpot Japanの調査では、生成AIを業務で活用するマーケターが8割を超える一方で、「AIが作成した情報は正しいかわからない」「機械的な文章では信頼できない」という不安が顕在化しています。ユーザーは無意識のうちに、内容以上に“誰が・どんな立場で語っているか”を精査するようになっているのです。
実際、GoogleがE-E-A-Tを重視する背景には、検索品質の向上だけでなく、誤情報によるユーザー被害を防ぐ目的があります。この評価軸は、そのまま人間の意思決定プロセスと重なります。特に高額・長期契約になりやすいB2Bでは、信頼できない情報源を起点に社内検討が進むことはほぼありません。
| 要素 | 満たされない場合の影響 | ナーチャリング上の結果 |
|---|---|---|
| 経験(Experience) | 現場感がなく机上の空論に見える | 自分事化されず離脱 |
| 専門性(Expertise) | 内容が浅く他記事と差別化できない | 比較検討フェーズで除外 |
| 権威性(Authoritativeness) | 誰の意見かわからない | 社内説得資料として使えない |
| 信頼性(Trustworthiness) | 売り込みに見える | 接触そのものを避けられる |
Marketing Oneの2025年トレンド分析でも、企業発信よりUGCや実名の個人発信が信頼されやすい傾向が強まっていると指摘されています。これは、信頼が一度で獲得されるものではなく、接触の積み重ねで育つことを示しています。
- 実体験や失敗談が含まれている
- 立場や利害関係が明示されている
- 一次情報や独自データが示されている
こうした要素を備えたコンテンツは、即座にCVしなくても「この会社は信頼できそうだ」という認知を蓄積します。この蓄積こそがナーチャリングであり、後続のメール、資料、商談の受容度を大きく左右します。
SmartHRの事例でも、社員や責任者の実名による発信、意思決定プロセスを含めたストーリー型コンテンツが、最終的な受注貢献度の高い接点として機能していることが示されています。E-E-A-Tが高いコンテンツは、短期指標では測れなくとも、長期的に最も効く資産なのです。
Z世代・AI検索・クッキーレスが変える顧客行動
Z世代の台頭、AI検索の普及、そしてクッキーレス化は、オウンドメディアにおける顧客行動を同時多発的に変えています。従来の「検索して、記事を読んで、広告で追いかける」モデルは、すでに前提として崩れ始めていると捉える必要があります。
Z世代は情報感度が高く、企業の発信を一歩引いた目で見ています。Marketing Oneのトレンド分析によれば、彼らは広告色の強いコンテンツや整いすぎた企業メッセージを避け、UGCや個人の実体験を重視する傾向が顕著です。B2Bであっても例外ではなく、社員の言葉や現場の失敗談など、作為の少ない情報こそが信頼の起点になります。
| 変化要因 | ユーザー行動の変化 | メディア側の影響 |
|---|---|---|
| Z世代 | 本音・体験談を重視 | 人や文脈が見える発信が必須 |
| AI検索 | 検索結果で自己完結 | 一次情報・深い洞察が必要 |
| クッキーレス | 追跡広告への接触減少 | 自社内データ活用が前提 |
AI検索の進化も、顧客行動を静かに変えています。GoogleのSGEやPerplexityのようなAI検索では、ユーザーはリンクをクリックする前に要点を把握します。その結果、一般論や用語解説だけの記事は、読まれずに価値判断されてしまうリスクが高まっています。HubSpotなどが指摘するように、今後参照されやすいのは、独自調査、現場データ、専門家の見解といったAIが要約しきれない情報です。
一方でクッキーレス化は、顧客との関係性をリセットする出来事ではありません。GoogleによるサードパーティCookie廃止の流れにより、リターゲティング広告への依存は現実的ではなくなりました。その代わり、オウンドメディア内での行動履歴や関心テーマといったファーストパーティデータの価値が相対的に高まっています。
- どの記事をどの順で読んだか
- どのテーマで滞在時間が長いか
- どの形式(記事・動画・診断)に反応したか
これらはすべて、広告に頼らずに顧客理解を深める手がかりです。Marketing Oneが述べるように、重要なのはデータの量ではなく文脈です。なぜその情報を求めているのかを読み取れるメディアだけが、次の接点を自然につくれます。
三つの変化に共通する本質は、顧客が「選ばされる存在」から「自ら選ぶ主体」へと移行した点です。オウンドメディアは流入装置ではなく、信頼を蓄積する場所へと役割を変えています。この前提に立てるかどうかが、これからのナーチャリング成果を大きく左右します。
ファネル視点で再設計するオウンドメディア戦略
ファネル視点でオウンドメディア戦略を再設計する本質は、コンテンツを点ではなくプロセスとして捉え直すことにあります。多くのメディアが陥る失敗は、認知獲得用の記事とコンバージョン導線が断絶している点です。**ユーザーは一直線に購買へ進む存在ではなく、段階的に心理と行動を変化させていく**という前提に立つ必要があります。
WACULの調査が示すように、B2Bサイトの直行CV率は0.7%と極めて低く、ほとんどの訪問者は複数ページを行き来しながら慎重に情報を精査しています。これは、ミドルファネルでの意思決定支援が不十分なメディアほど、せっかく獲得した流入を取りこぼしていることを意味します。ファネル再設計とは、この“失われた検討プロセス”を構造的に補完する作業です。
| ファネル段階 | ユーザー心理 | 求められる役割 |
|---|---|---|
| 認知 | 課題が曖昧 | 問題提起・気づき |
| 検討 | 比較・不安 | 判断材料の提供 |
| 決定 | 失敗回避 | 背中を押す根拠 |
重要なのは、各段階でコンテンツの“目的”を明確に分けることです。例えば検討フェーズでは、PVを稼ぐことよりも「次の一歩に進むための納得感」を与えることがKPIになります。SmartHRが実践しているように、受注データから逆算して貢献度の高い記事を特定するアプローチは、ファネル視点での最適化を現実的なものにします。
また、生成AIの普及によって情報がコモディティ化した現在、ファネル設計は“量”ではなく“接続性”で差がつきます。**どの記事から来たユーザーが、どの情報を経由し、どの段階で離脱・前進したのか**を想定した回遊設計が不可欠です。これはSEOの内部リンク最適化とも重なりますが、目的は検索評価ではなくユーザーの意思決定支援にあります。
- 各記事をファネル段階で分類する
- 隣接フェーズへの自然な導線を設計する
- 急激なCV訴求を避ける
ファネル視点で再設計されたオウンドメディアは、単なる集客装置ではなく、営業前工程を担う“デジタルな育成基盤”として機能します。HubSpotが指摘するように、買い手は営業接触前に意思決定の大半を終えています。その意思決定の舞台を自社メディア内に構築できるかどうかが、2025年以降の競争力を大きく左右します。
この視点に立てたとき、オウンドメディアは初めてナーチャリング装置として本来の価値を発揮し始めます。
売上につながる指標へ切り替えるためのKPI設計
オウンドメディアを売上に結びつけるためには、KPIをPVやセッション数といった表層指標から、収益に近い指標へ意図的に切り替える必要があります。多くの企業が直面しているナーチャリング不全の背景には、追うべき指標が売上プロセスと分断されているという構造的な問題があります。
HubSpot Japanの調査によれば、マーケターの多くが生成AIやMAを活用している一方で、「成果を正しく測れていない」という課題を感じています。これはツールの問題ではなく、KPI設計が依然として集客中心に留まっていることが原因です。売上につながるKPIとは、顧客の意思決定プロセスの前進を捉える指標です。
| KPI区分 | 主な指標 | 売上との関係性 |
|---|---|---|
| 関心深化 | 読了率・エンゲージメント時間 | 課題理解と信頼形成の度合い |
| 検討行動 | 回遊率・再訪問率 | 比較検討フェーズへの移行 |
| 商談準備 | MCV達成率 | 営業接触前の温度感 |
| 売上貢献 | CV貢献度 | 受注プロセスへの寄与 |
特に重要なのが、直接コンバージョンではなくコンバージョン貢献度です。SmartHRでは、どの記事が商談や受注のプロセスに含まれていたかを可視化し、売上から逆算して評価しています。これにより、PVは少なくても受注率の高い記事に投資判断ができるようになりました。
また、売上につながるKPI設計ではマイクロコンバージョンの位置づけが欠かせません。資料ダウンロード、診断コンテンツの利用、ウェビナー視聴などは、すぐに売上を生まなくても、顧客の検討ステージを一段進めた証拠になります。
- 記事単体ではなく、購買プロセス全体で評価する
- 直接CVだけでなく、間接的な貢献を測定する
- 営業・受注データと必ず接続する
WACULの調査が示すように、B2Bでは即決CVは0.7%と極めて低く、多くのユーザーは長期的に情報を比較しています。この現実を踏まえれば、短期成果だけを追うKPI設計は不合理です。KPIは成果を測る物差しであると同時に、組織の意思決定を方向づける装置でもあります。
売上につながる指標へ切り替えることは、オウンドメディアを単なる集客装置から、営業と並走する戦略資産へ進化させる行為です。その第一歩が、顧客の行動変容を正しく捉えるKPI設計なのです。
参考文献
- オルタナティブ・ブログ(ITmedia):【2024年】BtoB企業の売り手側におけるマーケティングや営業でのデジタル活用の意識調査
- HubSpot Japan / マナミナ:日本のマーケティングに関する意識・実態調査
- PR TIMES:日本の営業に関する意識・実態調査2024の結果をHubSpotが発表
- ProFuture株式会社:B2Bサイト、全CVの58%がトップページからフォームへ直行(WACUL調査)
- Web担当者Forum(インプレス):SmartHRマーケティング責任者・岡本剛典に聞く成長を加速するオウンドメディア戦略
- Marketing One:デジタルマーケティングトレンド15選|Z世代・AI・動画戦略
- Similarweb:2024年マーケティングベンチマークレポート
