オウンドメディアを運用しているものの、「記事は更新しているのに成果が説明できない」「PVは伸びても事業貢献が見えない」と感じていませんか。
ポストCookie時代を迎えた今、オウンドメディアは単なる集客チャネルではなく、企業のデータ資産を育てる中核的な存在へと変化しています。しかし現場では、PVや記事本数といった分かりやすい指標に縛られ、意思決定に活かせない“なんとなく運用”から抜け出せていないケースも少なくありません。
本記事では、オウンドメディアを事業成果につなげるために欠かせないデータドリブン・マネジメントの考え方を整理し、成長フェーズ別のKPI設計、高度な読了計測、GA4を用いた分析、ROIの示し方までを体系的に解説します。
感覚や経験だけに頼らず、根拠ある数字で社内を動かし、メディアを「続ける施策」から「積み上がる資産」へ変えたい方にとって、判断軸がクリアになる内容です。オウンドメディアの価値を正しく測り、次の一手を描くヒントを持ち帰ってください。
ポストCookie時代におけるオウンドメディアの役割変化
ポストCookie時代に入り、オウンドメディアの役割は根本から変化しています。これまで主流だったサードパーティCookieを前提としたターゲティング広告やリターゲティング施策は、世界的なプライバシー保護強化の流れの中で機能不全に陥りつつあります。欧州のGDPRや米国のCCPA、日本における改正個人情報保護法・改正電気通信事業法の施行により、企業が第三者データに依存してユーザー行動を把握することは、現実的ではなくなりました。
この環境変化により、オウンドメディアは単なる集客チャネルではなく、**ユーザーの同意を前提にデータを蓄積できる「自社データの基盤」**として再定義されています。自社サイト上で取得できるファーストパーティデータや、ユーザー自身が能動的に提供するゼロパーティデータは、透明性と信頼性の面で圧倒的に価値が高く、今後のマーケティングや事業戦略の中核を担います。米国マーケティング協会によれば、消費者は自ら価値を感じるブランドに対しては、データ提供に前向きになる傾向があるとされており、関係性の質そのものが成果を左右します。
しかし現場では、依然としてPVを中心とした旧来型の評価軸が残り、「記事を量産すること」が目的化しているケースが少なくありません。宣伝会議が2024年から2025年にかけて実施した調査では、約8割の企業がオウンドメディアの効果を実感している一方で、その多くが「企業イメージ向上」といった定性的評価にとどまり、約6割がコンテンツ更新の継続に疲弊している実態が明らかになっています。これは、オウンドメディアを短期施策として捉え続けていることの限界を示しています。
| 従来の位置づけ | ポストCookie時代の位置づけ |
|---|---|
| SEOや広告補完のための集客装置 | 事業に直結するデータ資産の蓄積基盤 |
| PVや記事本数が主な成果指標 | エンゲージメントやデータ取得価値が主軸 |
| 外部プラットフォーム依存 | 自社管理・自社活用が前提 |
重要なのは、オウンドメディアが「所有している」こと自体に戦略的意味が生まれた点です。広告やSNSはアルゴリズム変更一つで成果が激変しますが、オウンドメディアは企業自身が設計し、改善し、長期的に育てることができます。**これは不確実性の高い時代における、極めて強力な競争優位です。**マッキンゼー・アンド・カンパニーも、顧客との直接的な接点を持つ企業ほど、持続的成長を実現しやすいと指摘しています。
ポストCookie時代において、オウンドメディアは「読まれるかどうか」以上に、「信頼され、データを託される存在になれるか」が問われます。そのためには、短期的な数値に一喜一憂する運用から脱却し、ユーザーとの長期的な関係性を前提とした設計思想が不可欠です。オウンドメディアは、もはやマーケティング施策の一部ではなく、企業のデジタル戦略そのものを支える基盤へと進化しているのです。
なぜオウンドメディアは『なんとなく運用』に陥るのか

オウンドメディアが「なんとなく運用」に陥る最大の理由は、担当者の意識やスキル不足という単純な話ではありません。**戦略の前提が変わったにもかかわらず、評価と運用の設計が過去の成功体験のまま止まっていること**に、本質的な原因があります。
特に顕著なのが、目的と指標のズレです。オウンドメディアは本来、企業の事業やブランドに長期的に貢献する「資産」ですが、現場では今なおPVや記事本数といった分かりやすい数字が評価軸になりがちです。宣伝会議が2024年から2025年にかけて実施した調査でも、約8割の企業が効果を感じている一方、その中身は「イメージ向上」などの感覚的評価に留まり、約6割が「コンテンツ数の維持」に疲弊していると報告されています。
多くの現場ではGoogle Analyticsなどのツールを導入し、定例会議で数値報告を行っています。しかし、その数字が「なぜそうなったのか」「次に何を変えるのか」という議論につながらないまま、報告で終わってしまいます。KGIとKPIの関係が整理されていないため、数字が単なる結果報告になり、改善の指針にならないのです。
さらに問題を複雑にしているのが、組織構造の分断です。マーケティング部門は送客数やPVを追い、営業部門は商談化率や受注率を見る。この二つのデータがつながっていないため、メディアの成果が事業成果として認識されません。その結果、「とりあえず更新しておこう」「止める理由もないから続けよう」という、惰性の運用が常態化します。
| 運用状態 | 主な評価軸 | 現場で起きやすい現象 |
|---|---|---|
| なんとなく運用 | PV・記事本数 | 更新が目的化し、改善が起きない |
| 戦略的運用 | 事業KGIと連動したKPI | 数字をもとに具体的な打ち手が決まる |
もう一つ見逃せないのが、外部環境の変化への理解不足です。Cookie規制や個人情報保護法の強化により、広告に依存した集客は限界を迎えています。こうした背景から、オウンドメディアはファーストパーティデータを蓄積できる貴重な接点として再定義されています。しかし、この戦略的価値が現場に十分共有されていないと、従来型の「SEO用の記事を量産する場所」という認識から抜け出せません。
結果として、目的は曖昧、成功の定義も不明確なまま、日々の制作業務だけが回り続けます。**「続けているが、なぜ続けているのか説明できない」状態こそが、なんとなく運用の最終形**です。この構造を理解しない限り、ツールを変えても、記事の質を一時的に上げても、本質的な改善にはつながりません。
成長フェーズ別に考えるオウンドメディアのKPI設計
オウンドメディアのKPI設計で最も重要なのは、現状の成長フェーズに合った指標を選ぶことです。立ち上げたばかりのメディアと、すでに一定の流入と認知を獲得しているメディアでは、追うべき数字が根本的に異なります。にもかかわらず、多くの現場で起きているのが、フェーズを無視したKPI設定による評価のミスマッチです。
例えば立ち上げ期からPVやCVを求めてしまうと、成果が出ない焦りから短期的に数字が出そうなテーマに偏り、結果としてメディアの軸が定まらなくなります。SmartHRのオウンドメディア事例でも指摘されているように、初期には検索流入が伸びない「潜伏期間」が存在し、この期間を前提にしたKPI設計と社内合意が不可欠です。
| 成長フェーズ | 主な目的 | 重視すべきKPI |
|---|---|---|
| 立ち上げ期 | 基盤構築 | 記事公開本数、制作進行率 |
| 運用初期 | 認知拡大 | セッション数、検索表示回数 |
| 運用中期 | 定着・関係構築 | 読了率、リピーター率 |
| 運用後期 | 事業貢献 | CV数、商談化率 |
運用初期に入ると、KPIは量から質へと徐々にシフトします。検索結果での露出を示すSearch Consoleの表示回数や、新規ユーザー率は、Googleにメディアの専門性が認識され始めているかを測る重要な先行指標です。Googleの検索品質評価ガイドラインでも、一貫したテーマ性と専門性の蓄積が評価に影響すると示されています。
さらに中期フェーズでは、単なる集客では不十分です。訪問したユーザーがどれだけ深く記事を読み、再訪しているかが問われます。GA4で計測できるエンゲージメント率や、GTMを用いた読了イベントは、「読まれているメディアかどうか」を判断する実践的なKPIになります。
最終的な運用後期では、KPIは明確に事業指標へ接続されます。資料請求数や採用応募数だけでなく、リードの有効率やLTVまで含めて評価することで、オウンドメディアが「コスト」ではなく「投資」であることを説明できるようになります。サイボウズの事例が示すように、広告経由と比較した受注率や継続率を提示できれば、経営層の意思決定にも耐えうる指標設計になります。
このように、成長フェーズ別のKPI設計は単なる数値管理ではありません。今どの壁を越える段階なのかを定義し、チームの判断基準を揃えるための羅針盤として機能させることが、データドリブンなオウンドメディア運用の出発点になります。
ビジネスモデル別に整理するKPIロジックツリー

ビジネスモデル別にKPIロジックツリーを整理する最大の意義は、オウンドメディアの成果を事業成果へと直結させる「因果の道筋」を明確にできる点にあります。PVやセッション数といった表層的な指標ではなく、どの数字が最終成果にどのようにつながっているのかを構造で理解することが重要です。Happy Analyticsの小川卓氏が示す売上分解の考え方は、この設計において極めて実践的な示唆を与えてくれます。
BtoBリード獲得型のオウンドメディアでは、KGIは商談数や受注数に設定されるケースが一般的です。その場合、商談数は単一の指標で決まるものではなく、複数の行動指標の積み重ねとして捉える必要があります。**特に重要なのは、集客量よりも「読まれたか」「行動を促せたか」という質の指標が中間KPIとして機能する点**です。宣伝会議の調査でも、BtoBメディアの成果停滞要因として「PVはあるが商談につながらない」という声が多く挙がっています。
| 階層 | KPI | ビジネス上の意味 |
|---|---|---|
| 集客 | セッション数 | 潜在顧客との接触母数 |
| 関心 | 記事読了率 | 課題解決への納得度 |
| 誘導 | CTAクリック率 | 次アクションへの意欲 |
| 転換 | フォーム通過率 | 心理的・物理的ハードル |
| 成果 | 商談化率 | 営業価値のあるリード比率 |
このように分解すると、例えば商談数が伸びない原因が「流入不足」なのか、「記事は読まれているがCTAが弱い」のかを切り分けられます。**ロジックツリーは、責任の所在を曖昧にするためではなく、改善レバーを特定するための道具**だと理解することが重要です。
一方、広告収益やアフィリエイトを主軸とするメディア型モデルでは、KGIは売上となり、構造は大きく異なります。ここではUU数だけでなく、訪問頻度や回遊率が極めて重要な中間指標になります。Googleの公開情報でも、ページ滞在と回遊が広告収益に強く相関することが示されています。**一度きりの大量流入よりも、何度も訪れるユーザーをどれだけ増やせるかが収益の安定性を左右します。**
ビジネスモデルごとにKPIロジックツリーを描くことで、「何となく良さそうな数字」を追う運用から脱却できます。経営層と現場が同じ構造図を共有できれば、議論は感覚論ではなく、どのKPIを動かすべきかという建設的な意思決定へと進化します。オウンドメディアを事業資産として育てるためには、この構造設計こそが出発点になります。
PV至上主義を脱却するための読了・エンゲージメント計測
PV至上主義から脱却するために最初に見直すべきなのが、「本当に読まれたか」「心が動いたか」を捉える読了・エンゲージメント計測です。PVはクリックの結果にすぎず、コンテンツの価値や事業貢献を直接示しません。特に解説型・ナレッジ型の記事では、**少ないPVでも深く読まれた記事の方が、将来的な成果につながる**ケースが多く見られます。
Google Analytics 4では、従来の直帰率に代わりエンゲージメント率が主要指標となりました。Googleによれば、10秒以上の滞在、2ページ以上の閲覧、コンバージョンのいずれかを満たしたセッションは「エンゲージメントがあった」と定義されます。これは「1ページで完結する良質な記事」を正当に評価するための思想転換であり、オウンドメディアとの相性は極めて高いです。
一方で、エンゲージメント率だけでは「どこまで読まれたか」は分かりません。そこで重要になるのが読了計測です。標準のスクロール率はページ全体の90%到達を基準にしており、本文終了が60〜70%付近にある多くのメディア構造では、**真面目に最後まで読んだ読者が未読扱いされる**という歪みが生じます。
| 指標 | 何が分かるか | 判断の注意点 |
|---|---|---|
| PV | クリック数・露出規模 | 内容の消費度は不明 |
| エンゲージメント率 | 一定以上の関与有無 | 深さまでは測れない |
| 読了数 | 本文完読の実態 | 計測設計が必須 |
この課題に対し、GTMを用いて「記事本文の終了要素が一定時間視認されたか」をトリガーにする実読了計測が有効です。Border Hazeなどの実践例でも示されている通り、要素表示と滞在時間を組み合わせることで、流し見や誤スクロールを除外できます。**読了数は記事品質を測る最も誠実な定量指標**といえます。
実務では、PVではなく「エンゲージメント・セッション数」や「読了数」を基準に記事を評価することで、釣りタイトルや量産型コンテンツを自然に排除できます。宣伝会議の調査でも、多くの企業が効果を感じつつ疲弊している背景には、評価指標の誤りがあると指摘されています。**数字を変えることは、運用の思想を変えること**です。
読了・エンゲージメント計測を軸に据えることで、「集めたPVをどう増やすか」ではなく、「価値ある読者体験をどう増やすか」という問いに、組織全体が向き合えるようになります。
GA4探索レポートで見つける改善の打ち手
GA4の探索レポートが真価を発揮するのは、数字を眺めるためではなく、具体的な改善アクションを導き出すためです。標準レポートでは見えない「なぜ起きているのか」「どこを直せば成果が動くのか」を発見できる点に、この機能の本質があります。
まず着手すべきは、記事閲覧から成果までの流れを分解し、改善インパクトが最も大きいボトルネックを特定することです。探索のファネル分析を使えば、記事到達数、読了、CTAクリック、フォーム完了といった各段階の離脱率を一目で把握できます。
| 離脱が多い地点 | 示唆される課題 | 優先すべき改善打ち手 |
|---|---|---|
| 記事到達→読了 | 内容が期待とズレている | 導入文の書き直し、検索意図の再定義 |
| 読了→CTAクリック | 行動喚起が弱い | CTA文言・配置のABテスト |
| CTA→完了 | 入力ハードルが高い | フォーム項目削減、EFO改善 |
例えば、読了率は高いのにCTAクリック率が極端に低い記事群が見つかった場合、記事内容自体は評価されている可能性が高いです。この場合、新規記事の量産よりも、既存記事のCTA改善の方がROIは高くなります。Happy Analyticsの小川卓氏も、探索分析では「コンテンツの良し悪し」と「導線の良し悪し」を切り分けることが重要だと指摘しています。
次に有効なのが、ディメンションを掛け合わせたクロス分析です。記事URLに対し、流入元、デバイス、ユーザー属性を組み合わせることで、特定条件下でのみ発生している機会損失を発見できます。
例えば、自然検索流入ではエンゲージメントが高いのに、SNS流入では直後離脱が多い記事がある場合、タイトルやOGPが過剰に期待値を上げている可能性があります。逆に、スマートフォンのみ読了率が低い場合は、改行や図表の視認性に問題があると仮説を立てられます。Googleが提唱するモバイルファーストの考え方からも、デバイス別分析は欠かせません。
さらに一歩進むと、コンテンツを個別ではなく塊で評価できます。カテゴリや制作体制ごとに指標を比較すると、「集客力は高いが成果に弱い記事群」「流入は少ないがCVRが高い記事群」といった傾向が明確になります。宣伝会議の調査でも、成果を出しているメディアほど、記事単位ではなくテーマ単位で改善判断を行っていることが示されています。
ここで導かれる打ち手はシンプルです。前者には内部リンクや再編集による送客強化、後者には関連記事の拡充や露出増加を行います。探索レポートは、どの記事を捨て、どの記事に投資すべきかという編集判断を、感覚ではなく根拠で支えてくれます。
GA4探索は分析のための機能ではなく、意思決定のための機能です。数字を切り口に仮説を立て、最小の工数で最大の改善効果を狙う。そのための「次の一手」を見つける場として使いこなせたとき、オウンドメディア運用は初めてデータドリブンになります。
定量データだけに頼らないコンテンツ品質評価
オウンドメディアの評価というと、PVやCV、読了率といった数値に目が向きがちですが、数字だけではコンテンツの本質的な価値を捉えきれない場面が確実に存在します。特に、ブランディングや思想浸透、信頼構築を目的とするコンテンツほど、その効果は遅行性であり、定量データには表れにくい傾向があります。
この課題について、コンテンツマーケティングの実務研究でも「行動データは結果であり、品質の直接的な証明ではない」と指摘されています。ハーバード・ビジネス・レビューでも、BtoB領域においては意思決定者が購買に至るまでに、合理性だけでなく信頼や共感といった情緒的要因を重視することが示されています。つまり、数値化できない要素こそが、最終成果に強く影響しているのです。
| 評価軸 | 定量評価で見えること | 定性評価で補完できること |
|---|---|---|
| 読者理解 | 滞在時間、回遊率 | 悩みへの寄り添い方、言葉選びの的確さ |
| 専門性 | 検索順位、被リンク数 | 現場知見の深さ、一次情報の有無 |
| 信頼性 | 指名検索の増減 | トーンの一貫性、主張の透明性 |
定性評価の代表的な手法が、編集部や責任者によるレビューです。ここで重要なのは主観的な好き嫌いではなく、評価軸を明文化することです。例えば「この記事は誰の、どの課題を、どこまで解決しているか」「競合ではなく自社が語る必然性があるか」といった問いを常に投げかけます。問いの質が、そのままコンテンツ品質の底上げにつながります。
また、読者から寄せられる営業現場やカスタマーサポート経由の声も、極めて価値の高い評価材料です。「この記事を読んで問い合わせました」「社内説明に使いました」といったコメントは、数百PVよりも重い意味を持つ場合があります。Googleも品質評価ガイドラインで、専門性・権威性・信頼性を重視していると公表しており、人間の評価と検索エンジンの評価は年々近づいていると考えられます。
実務でおすすめなのは、数値レビューと定性レビューを意図的に分けて実施することです。月次ではGA4などでパフォーマンスを確認し、四半期に一度は「このメディアは誰から、どのように信頼され始めているか」を言語化する場を設けます。言葉にできない価値は、再現も改善もできません。
定量と定性は対立概念ではなく、相互補完の関係です。数字に表れない品質を正しく評価できるようになったとき、オウンドメディアは単なる集客装置ではなく、企業の思想と価値を蓄積する資産として機能し始めます。
オウンドメディアの事業貢献を示すROIとアトリビューション
オウンドメディアの事業貢献を語る際、避けて通れないのがROIとアトリビューションです。経営層から「結局いくら儲かったのですか」と問われたとき、PVや直感的な手応えだけでは説明になりません。重要なのは、オウンドメディアが直接売ったかどうかではなく、意思決定プロセスにどれだけ影響を与えたかを定量で示すことです。
多くの企業で使われがちなラストクリック評価では、コンバージョン直前の接点だけが評価されます。その結果、記事で認知を獲得し、比較検討を支えたオウンドメディアの貢献はゼロと見なされがちです。Googleが提唱するデータドリブンアトリビューションでは、過去の行動データを基に各接点の寄与度を統計的に配分するため、こうしたアシスト効果を可視化できます。
| モデル | 評価の考え方 | オウンドメディアとの相性 |
|---|---|---|
| ラストクリック | 最後の接点を100%評価 | 低い |
| ファーストクリック | 最初の接点を100%評価 | 高い |
| データドリブン | 貢献度を分配 | 非常に高い |
実務では、単一モデルに依存せず、ラストクリックとデータドリブンを並べて報告するのが現実的です。全コンバージョンのうち何割でオウンドメディアが起点または中間接点になっているかを示すだけでも、意思決定者の理解は大きく変わります。宣伝会議の調査でも、効果を感じている企業が多い一方で、定量説明が弱いことが課題とされています。
ROI算出では時間軸の誤解が頻発します。オウンドメディアは広告のようなフロー型ではなくストック型資産です。1本の記事は公開月だけでなく、1年、2年と継続的にリードを生みます。そのためROIは単月ではなく、少なくとも12〜24カ月、可能であればLTVを加味して評価すべきです。サイボウズの事例でも、メディア経由リードは受注率や継続率が高い点が重視されています。
ROIとアトリビューションを正しく設計すると、メディアはコストセンターではなく投資対象として扱われます。アシスト効果を含めた数値で語れるかどうかが、オウンドメディアが事業戦略の中核に残れるかを左右します。
データを組織の意思決定につなげるレポーティング手法
データを組織の意思決定につなげるレポーティングで最も重要なのは、数字を「説明」することではなく、**次に何を決めるべきかが一目で分かる状態をつくること**です。オウンドメディアのレポートが形骸化する最大の原因は、指標が多すぎ、論点が拡散している点にあります。
意思決定に資するレポートは、必ず経営視点の問いから逆算されます。たとえば「このメディア投資を継続・拡大すべきか」「どの施策にリソースを集中すべきか」といった問いです。GoogleやAdobeの分析フレームワークでも強調されている通り、レポートは問いとセットで初めて価値を持ちます。
具体的には、KGIに直結する指標を起点に、1〜2階層下の主要KPIだけを提示します。数十指標を並べるのではなく、「意思決定に不要な数字は載せない」勇気が必要です。McKinseyが提唱するエグゼクティブレポーティングでも、1ページにつき1メッセージが原則とされています。
| 観点 | 意思決定につながらない例 | 意思決定につながる例 |
|---|---|---|
| 目的 | 数値の共有 | 判断材料の提示 |
| 指標数 | PV、UU、直帰率など多数 | KGI+主要KPI数個 |
| 結論 | 読み手任せ | 推奨アクションを明示 |
さらに重要なのが、**比較軸の設計**です。単月の数値だけでは判断できません。前月比、前年同月比、目標比のいずれかを必ず置き、変化の意味を示します。宣伝会議の調査でも、成果を実感している企業ほど「目標比」を重視している傾向が示されています。
文章表現にも工夫が必要です。「PVが15%増加しました」ではなく、「検索流入が伸びた結果、資料請求数が想定より早く積み上がっています。そのため来月はSEO記事制作を優先します」と、**数字を判断の言語に翻訳**します。これにより、レポートは単なる報告資料から、会議を前に進める意思決定ツールへと変わります。
オウンドメディアの価値は、継続的な改善と投資判断の積み重ねで最大化されます。その中心にあるのが、データを「行動を決める材料」として再構成するレポーティングなのです。
AI時代に求められるオウンドメディアと計測の考え方
生成AIの普及と検索体験の変化により、オウンドメディアは「読まれる前提」で設計・評価する時代から大きく転換しつつあります。Googleの生成AI検索や対話型AIの台頭により、ユーザーは検索結果上で要約を得て離脱する、いわゆるゼロクリック行動を取るケースが増えています。この環境下では、単純な流入数の最大化ではなく、あえて訪れてくれたユーザーの価値をどう捉え、どう計測するかが核心になります。
AI時代のオウンドメディアに求められる役割は、「情報の網羅」ではなく「信頼と判断材料の提供」です。スタンフォード大学のAI Index Reportでも、生成AIは一般的知識の要約には強い一方、文脈理解や一次情報の価値は人間側に残ると整理されています。つまり、AIに代替されにくい体験価値を提供できているかを、計測の軸そのものから見直す必要があります。
ここで重要になるのが、PVやセッションといった量的指標から、エンゲージメント中心の計測設計への移行です。GA4で定義されるエンゲージメント率や滞在時間、読了イベントは、AI要約を超えて「わざわざ読まれた」証拠になります。宣伝会議の調査でも、オウンドメディアの効果実感は定性的に高い一方、数値評価が追いついていないことが示されており、評価軸の再設計は急務です。
| 従来の評価軸 | AI時代の評価軸 | 意味合い |
|---|---|---|
| PV・UU | エンゲージドセッション | 偶然の流入か、価値ある接触かを区別 |
| 直帰率 | 滞在時間・読了 | 満足して離脱した行動を正当に評価 |
| CV数 | アシスト・再訪 | 意思決定への貢献度を可視化 |
また、計測の考え方自体も「後追いの評価」から「意思決定を導く計測」へ進化させる必要があります。たとえば、生成AI時代には記事単体の成果だけでなく、指名検索の増減や再訪率といった中長期指標が、ブランド想起の代理指標として機能します。Google自身も、検索品質評価ガイドラインでE-E-A-Tを重視しており、これは計測においても無視できません。
重要なのは、AIによってトラフィックが不安定になることを悲観するのではなく、残ったデータの一つひとつを重く扱う姿勢です。少ない訪問でも、深く読まれ、記憶に残り、次の行動につながるのであれば、オウンドメディアは事業資産として機能しています。AI時代の計測とは、効率の良い刈り取りではなく、信頼の蓄積を数値で説明する技術だと言えます。
参考文献
- Braze:Cookie規制とは?現在の状況やこれから起こる影響や対策・注意すべきこと
- PR TIMES:8割「オウンドメディアの効果」を実感するも「コンテンツ数の維持」は課題
- Keywordmap Academy:オウンドメディアのKPIを設定する方法とは?指標の具体例を運用フェーズごとに紹介
- ferret:商談につながるホットリードを増やすには?獲得のポイントを解説
- XINOBIX:オウンドメディアのKPIツリーを全公開!集中すべきはこの指標
- Adobe for Business:ユーザー事例:サイボウズ
